Ningen Isu
鏡地獄 (Kagamijigoku)
合わせ鏡に続く
白い横顔愛でる
男ひとり

広い世間を恐れ
そっと背中を向ける
男ひとり

合鍵のない城をこさえ
機械仕掛けの影と暮らす
夢の世界を 映しやまない
万華鏡

鏡の中から
今も聞こえる
呪い声
鏡の中から
今もしている
呻き声
「地獄!」

恋の苦楽を厭(いと)い
硬い人形撫でる
男ひとり

窓すらもない砦こもり
独り善がりの意匠凝らす
夢の続きを 描きやまない
顕微鏡