透明な瓶に入った汚い字の手紙を頼りに
先の見えない水の上を
ゆっくりとゆっくりと
少女は旅するあの人を探して
あの人を一目見たい会いたい抱きしめたい
水平線上
これは運命でしょ
待ってるって言ってくれたからわたしは行くよ
どこだって行くよ明後日の方向だって未来だって遥か彼方千の線のむこうまで
かた足失った私の車椅子
押してくれたあなたは此処にはいない
今どこ いますぐとなりに
ここにあるのは 音と波
泡となリ消えるのは簡単
なんて思った瞬間
あなたの声が聞こえた きがした
オールを手に取り 孤独の 先へ
あなたが残したコンパス ゆれるたび
みなもに映る朝焼けが
あまりにも鮮やかで私は思わず目を閉じた
君はもう なんてこと考え始めたらきりがないよ
君がいないと わたしは 夢を無くした子供のよう
音のしないアトリエで今日も筆を持つ
連日キャンパスに描く
モチーフは義足をつけた女の子
陽だまりのような笑顔で笑ってる
あの時負った汚い傷は
気づかぬ内に深刻になっていたらしい
先は短いと 安静にと医者に言われたが
せめて
この絵を完成させるまでは
少女と今 今すぐに 想いは日に日に募る一方だ