女王蜂 (Queen Bee)
髪の毛 | Kaminoke
あのとき肩まで伸びた あなたとあたしとの仲を
一瞬の暑さが嫌になって 簡単に切って仕舞ったあの夏
もっといい人現れるでしょう 根拠のない自信踏み
まだ暑く明るい秋の世を あなた無しで迎えた

あんとき切らなきゃ今頃 胸元あたりかと思えば
急に寒く感じる首元 師走足早く過ぎてく
瞬間風速だけで あなたを追い抜いた人はもう
思い出せない 心が知らない

思い出す あなたの眼の中

もう一度伸びれば もう二度と切らない
もう一度伸ばせば もう二度は切れない
今更と叱ってよ その人にあげる声で言ってよ
優しい眼で そっと見送らないでよ

春までと決めた気持ち 容易く揺るがすことがあり
青色の脱色剤で 黒髪を派手に抜いた
傷みなんて知らない あなたが好きだったあたしが
鏡のなか独り 透けた髪をしている

ねえ思い出す 四時半
居ても立ってもいられない
やっと頬に掛かった髪は
あなたの風の噂に靡いて
今にも色を失いそう
今にも

もう一度伸びれば もう二度と切らない
もう一度伸ばせば もう二度は切れない
駄目だよって言ってよ あの人にあげる声で言ってよ
綺麗に成ったね、と優しくしないでよ

「あなたさえよければあたしなにもいらない」
そう言うあたしがなんだか なんだか
すごく嫌だ 気持ちが嫌だ
なんだ 泣けてきた
判ろうよ 判ってよ
あたしじゃなくても

もう一度伸びれば もう二度と切らない
もう一度伸ばせば もう二度は切れない
今更と叱ってよ その人にあげる声で言ってよ
優しい眼で そっと見送らないでよ