Genius Japan
[インタビュー] 多様性のハーモニー:クリスタル・ケイ25年の軌跡、音楽的功績、日本のエンターテイメントシーンへの先駆的な影響とは
取材・文: Genius Japan | 翻訳 @Ryuforstorm @RuiRui3 | 2月20日, 2024音楽業界で活動し続けて、25周年を祝うことができるアーティストは決して多くはありません。シンガーソングライターのクリスタル・ケイさんはまさにその一人で、2024年にメジャーデビュー25周年を迎えます。大ブレイクのきっかけは、日本レコード協会からプラチナ認定を受けた3枚目のアルバム『almost seventeen』でした。これまでに13枚を超えるアルバムをリリースし、何百万枚というセールス記録を樹立しつつ、世界各国で大勢のファンの前でパフォーマンスを行ってきたクリスタル・ケイさんは、国際的に最もよく知られた日本のアーティストの一人です。生まれ育った境遇のおかげで、独自のサウンドとスタイルを確立することに恵まれ、多様なルーツを持つアーティスト達にも多くの影響を与えることができました。その功績は、幅広く伝播し他にはないきらめく瞬間が散りばめられたものとなっています。
Genius Japanは、ご自身の音楽とこれまでに築き上げた成果、そして今後の展望などについて、クリスタル・ケイさんにお話を伺う機会に恵まれました。どうぞお楽しみください!
(訳注:今回のインタビューは全て英語で行われたため、日本語訳は Genius Japanコミュニティが許可を得て意訳したものになります。ご本人の発言は 英語版をご参照ください )
Credits: Yulia Shurー こんにちは!よろしくお願いいたします。メジャーデビュー25周年を迎えられるとのこと、おめでとうございます!難しいかもしれませんが、この25年間をワンフレーズで言い表すとしたら?
ありがとうございます。「クレイジーで、唯一無二で、遠い道のりで、あっという間で、彩り豊かな、素晴らしく、普遍的な旅路」ですね!
ー 13歳の時に「Eternal Memories」でメジャーデビューされてから、幅広い音楽スタイルのヒット曲を数多く発表していらっしゃいますが、これまで変わらずに持ち続けているコアな部分はありますか。
何年経っても変わらないのは、人々の溢れる感情、希望、ポジティブさ、人生のリアルさを、歌詞に反映させているという部分だと思います。また、世界中の方々が私の音楽を楽しみ、結びつくことができるようにと、当初から英語と日本語の歌詞を混ぜて歌っていることも変わっていません。
ー 韓国人のお母様とアフリカ系アメリカ人のお父様を持ち、韓国語やフランス語を含めて4つの言語を操ることができるとお聞きしました。マルチ文化のもとに生まれ育ったことは、ご自身の音楽やアーティストとしてのアイデンティティにどのような影響がありましたか。
いろいろな言語を聞いたり学んだりするのは好きですが、フランス語は中学のときに1年間勉強しただけですから、特に流暢というわけではないんですよ!日本にも米軍基地にも在住したことから3つの異文化を認識する機会に恵まれて、自分は超ラッキーだなと思っています。確固たる世界観を持って、オープンマインドでいることができるわけですし。そのおかげで、ポップス、R&B、ソウルに影響を受けたサウンドに、日本特有のメロディーをほんの少し織り交ぜながら、アメリカ人としての一面を取り入れることができました。日本語と英語の歌詞をこれほどスムースにミックスしてJ-POPやR&Bを歌える黒人と韓国人のミックスの女の子なんて、私以外には誰もいないでしょ。自分のユニークさを受け入れることは、サウンド的にもビジュアル的にも自分のスタイル全体に確実に影響を与えていますね。
Credits: Crystal Kay (Personal Photo)
ー 以前のインタビューで、ジャネット・ジャクソン、アリーヤ、マイケル・ジャクソンに影響を受けたと仰っていました。サウンドや芸術的な方向性に関して、どのような影響を受けたのでしょうか。
ビジュアルと振り付けは真っ先に影響を受けましたね。真似して踊るのも大好きでした!素晴らしいパフォーマンスとなるような、歌って踊れる楽曲を作りたいと思うようになりました。サウンド面では、気に入ったクールビートやサウンドを取り入れたり、時には好きなトラックの雰囲気を掴んで独自のものを生み出そうともしました。若い頃は、大好きなアーティストのようになりたくて、彼らが使っていた重厚なR&Bサウンドやボーカル・テクニックを重視していました。でも、自分自身がアーティストとしても人間としても成長するにつれて、歌詞のインパクトや音楽のオリジナリティを重視するようになりましたね。
Credits: Hayato Watanabe
ー 1999年のデビューから現在までを振り返り、ご自身の幅広いキャリアにおいてターニングポイントとなったアルバムはありますか。
むずかしいですね。どのアルバムも私にとっては全てベイビーみたいなもので、自分のキャリアを振り返ってその瞬間を表わしていると思いますが、ファースト・アルバムに関しては、全体的なプロダクションの観点からみて、かなり重要な作品だったと思います。アルバム『almost seventeen』をきっかけに、多くの方々に自分のことを知ってもらうようになり、注目を集めることになりました。欧米のトップ40を意識したサウンドで、キャッチーで耳に残る曲が多いアルバムでしたが、当時の日本では、そのようなR&Bアーティストは珍しかったと思いますね。
ー では逆に、今までのキャリアで困難な状況やチャレンジに直面したことはありましたか。そのような難題を解決することは、人として、或いはアーティストとしての成長にどのように役立ちましたか。
大きな壁に直面したのは「恋におちたら」というJ-POP色の強い曲を、なかなか受け入れ難かったときのことです。その後も、レーベルがアルバムに望んでいる曲と、自分が望むスタイルとのバランスを取ることが困難に感じました。ドラマ『恋におちたら〜僕の成功の秘密〜』の主題歌を歌うことが決まったとき、デモも曲もまったくピンとこなかったのを覚えています。プロデューサーもみんな気に入ってくれましたが、それまで自分がやってきた音楽とは違っていたので、 レコーディング中も自分の中で葛藤がありましたね。
曲がヒットしたことによりサウンドが路線変更されて、自分のサウンドにフォーカスする機会を逃してしまったように感じました。結局は、シングル曲は「恋おち」っぽいサウンドで、アルバム曲はR&B的なサウンドでバランスを取るというやり方になりましたが、「恋におちたら」は、今となってはいい曲だと理解しているし、この曲で有名になれたというのも事実ですね。年月が経ち、この曲がどれだけ人々に影響を与えたかを目の当たりにするにつれて、歌詞や曲から生み出されるエネルギーにより注目するようになりました。このサウンドと折り合いをつけてシンガーとしての自分の魅力に気づくことができたことは、自分にとって転機となりましたね。
Credits: Aya Shimizu
ー 今までのキャリアのなかで体験した、夢のような出来事について教えてください。
いくつかありますよ!ロイヤル・アルバート・ホールで行われた、ファイナルファンタジーのシリーズ25周年を祝うワールドツアー『FINAL FANTASY 25th Anniversary Distant Worlds: music from FINAL FANTASY THE CELEBRATION』で「Eyes On Me」を歌ったときに、スタンディングオベーションを受けたことは本当に忘れられません!伝説的な存在、ライオネル・リッチーと一緒に「Endless Love」を歌ったことも信じられない経験でした!あとひとつは、私のアイドル、ジャネットのプロデューサーであるジミー・ジャム&テリー・ルイスに、1曲のみならず3曲もプロデュースしてもらったこと!彼らとはその後も 交流が続いて、昨年のピッツバーグ・ジャズ・フェスティバルで共演できたことは、本当に凄いことでした。大好きな安室奈美恵さんと国立代々木競技場でサプライズ共演した「Revolution」だって忘れられない!彼女と一緒にステージに立つなんて信じられなかったし、スタジアムのあの轟音......。パフォーマンスが終わってステージを降りた後、号泣してしまいました。夢のような出来事はこれからも沢山あるでしょうね。
ー 世界各地で公演されていらっしゃるので、コンサートやイベントでファンとの印象的な交流などもありますよね。思い出深いものはありますか。
11年ほど前の、アメリカで初めてのショーは忘れがたいですね。日本へ帰国する前にニューヨークで挑戦してみようと思ったんです。お客さんが来てくれるのかどうかも、全くわかりませんでしたが、インスタグラムで宣伝しただけにもかかわらず、チケットは数分で完売したんですよ!会場から「次もやってほしい」と電話がかかってきたほどでした。ロウアー・イーストサイドのロックウッド・ミュージックホールで、60人収容の小さなステージでしたが、満員でとても楽しかったですね!アメリカのファンが実際に目の前にいて、自分の歌を大声で歌ってくれたのを聞いたときに感じた喜びと感謝の気持ちは、絶対に忘れられないものとなりました。他の州から車で何時間もかけて私に会いに来たとか、私に会うために10年間待ち続けたとか言ってくださって。信じられなかったですし、あの2つのショーのことはずっと覚えていますね。
ー 毎年恒例のクリスマス・ライブが、2023年も東京、大阪、横浜のBillboard-LIVEで開催されましたね。ご感想をお聞かせください。
とても楽しかったです!自分の中の何かが解き放たれたような気がしましたね。思いっきり全力を尽くす準備は完璧に整っていましたし、結果的にとても素晴らしいショーになったと思います。公演中のエネルギーは素晴らしくて、ファンの皆さんから興奮の波が押し寄せてくるのを感じましたし、パンデミック以降ようやく平常に戻りつつあると実感できるライブとなりました。
Credits: Aya Shimizu
ー Billboard-LIVEといえば、食事をしながら生演奏を楽しめる素敵な空間として人気ですが、構成やパフォーマンスの点では通常のコンサートとどのように違うのでしょうか。
Billboard-LIVEは、より親密な雰囲気のステージセットで公演時間も通常に比べて短いですね。短いセットリストを考えるのは難しいのですが、アコースティックや静かなバージョンの曲にしてみたり、色々と試して音楽を作っていくのは楽しいです。
コール&レスポンスでファンの皆さんと絆を深めることができたり、自分の歌に集中できるのも魅力です。また、来て下さる方々の年齢層がやや高めの設定なので、会話や交流をする時間も少し長めに取っています。大きなステージの設定よりも少し簡略化されているので、ファンの皆さんは特別バージョンの曲や、時にはマッシュアップ (訳注: 異なる曲を合成してリミックス的に一曲にする手法) なども楽しむことができるんです。
Credits: Yulia Shur
ー 2021年には、Official髭男dismの「I LOVE...」を含む初のカバー・アルバム『I SING』をリリースし、大好評となりました。また、芸能界のご友人たちとのカラオケバトル・シリーズにも好意的なコメントが数多く投稿されていますが、今後もカバーアルバムのリリースを検討していますか。その場合、どの曲を収録してみたいとお考えですか。
カバー・アルバムを出すことには前向きですが、収録曲リストがパーフェクトじゃないとダメなんです!どの曲をカバーするかを考えるのはとても大変で、膨大な量の曲や仮歌を聞き込みました。結果的に、自分は男性の歌を歌う方がずっと面白くて楽しいことに気付きましたね!昭和や平成の男性の歌を、もっと歌ってみたいと思っています。とはいえ、安室奈美恵さんやSPEED、竹内まりやさん、宇多田ヒカルさん、美空ひばりさんの曲はぜひともカバーしてみたいですね。
ー ご自身を思い起こさせる様な新人歌手はいますか?また、今後注目されるべき歌手はいますか。
ジョイス・ライスですね。彼女の2000年代初期のR&Bサウンドとノスタルジーを見事に併せ持っているところや、バイレイシャルでもあるところが自分と重なります。あとは私の曲「Gimme Some」でコラボさせてもらったダイチヤマモト さんも。彼はとても才能豊かな方で、日本語と英語がシームレスにミックスされています。彼のサウンドは、かっ��いいビートと洗練された��ロ��でとてもユニバーサル。それに彼はとてもシャイで繊細なので、そんなところも若い頃の自分を思い出すんです。二人とも間違いなく、みんなが注目すべき素晴らしいアーティストですね!
Credits: Hayato Watanabe
ー これまでのキャリアにおいて、海外の有名アーティストとコラボしてきました。現在の世界の音楽シーンで、一緒に仕事をしてみたい相手はいますか。
Amaarae とNekfeuとはまた一緒に仕事がしたいし、私の曲でもフィーチャーしたいみたいです。私はXG のファンなので、ぜひ一緒に仕事をしてみたいな。私と同じ、韓国人で黒人であり、韓国のヒップホップやR&Bの道を切り開いてきたYoon Miraeとも。Troye Sivan もご一緒できたら楽しそう!Fred Againのようなダンスプロデューサーとも仕事をしてみたいし、Mark Ronsonとだったら楽しいファンク・ディスコトラックを作れるだろうと思います。
XG
ー クリスタルさんは来年新しいアルバムとツアーを予定していますね。何かファンのみなさんが喜ぶ様なことを、事前にチラッと教えていただけませんか。
M-FloのTaku Takahashi がプロデュースした最新シングル「That Girl」が1月29日にリリースされました!この曲は誰もが楽しめるダンスアンセムで、アップテンポの超楽しいヴァイブス。ファンのみんなは踊るのが大好きだから楽しみに待っていてね!日本ではデビュー25周年記念ライブを予定していますし、来年には小規模ですがアメリカツアーも考えています!去年の夏に行なったLAでのショーが、私とアメリカのファンの中で何かに燃え上がらせてくれたんだと思うんですよ。
ー ソングライターとして、あなたはどのような方法で音楽を作っていますか?いつもどこから始めますか?
また、インスピレーションはどこから来ることが多いですか。
私はソングライターとしてまだ勉強中ですけど、いつもまず最初に曲やメロディーを聴いてインスピレーションを受けます。頭の中にキーワードが浮かんでくると、そのメロディにのせて適当な歌詞をつけて歌ってみて、そこから組み立てていく感じ。言葉やセリフ、感情をノートに書き留めておいて、それを歌詞に当てはめてみることもあります。歌詞を先に書いてあとから音楽をつけることができる人はすごいと思う。尊敬します。あと、誰かと共作するのも自分の作詞や思考回路を広げてくれるから好きです。インスピレーションは個人的な出来事や、強い感情や ひらめきから得ていると思います。また、新しい場所を旅したり自然の中に身を置いたりすることでも、多くのインスピレーションを得ることができますね。
Troye Sivan
ー この業界で25周年を迎えられましたが、まだまだこの先長いキャリアがあると思います。次に挑戦したいことは何ですか。
音楽、映画、ドラマ、舞台など何でも。他のアーティストのプロデュースや脚本も楽しくてやりがいがありそうな気がします。映画やテレビでの演技にもぜひ挑戦したい。伝説的に有名なブロードウェイミュージカル『ピピン』の”リーディングプレイヤー役” を演じる機会 に恵まれました。とても惹かれるミュージカルがあれば、また挑戦してみたいです。
ー デビュー25周年を迎えるにあたり、自分の音楽とキャリアがファンや日本の音楽シーンにどのような影響を与えてきたと思いますか。
皆さんの気持ちを代弁し、私の音楽を聴いてくれた人たちを元気づける声になれていたらいいなと思います。R&Bが日本で、よりメインストリームになるための道を切り開くことができたのではないかしら。また、日本のエンターテインメント業界や文化を担うバイレイシャルタレントの先駆者やロールモデルになれたのではと思っています。
ー 25年という素晴らしい道のりを支えてくれたファンにメッセージをお願いします。
皆さんのために、歌ったりパフォーマンスすることができて本当に心から感謝しています。私の音楽を聴いてくれて、ずっと応援してくれて本当にありがとう!私はいつまでも歌い続け、皆さんの人生のサウンドトラックの歌声であり続けたいと願っています!
Credits: Yulia Shur
写真提供:Crystal Kay 無断複写・転載・配布を禁じます
ー お忙しいスケジュールの中、お時間をさいていただきましてありがとうございました!クリスタル・ケイさんのニューシングル "THAT GIRL" の歌詞、翻訳歌詞はGeniusで読むことができます
ー クリスタル・ケイさんの公式SNSのフォローはこちらから!
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